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「ミサキラヂオ」瀬川 深 [読書]

時間がずれて音が届いたりする、ローカルFMのお話です。

ミサキラヂオ (想像力の文学)

ミサキラヂオ (想像力の文学)

  • 作者: 瀬川 深
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: 単行本


自分がラジオを聴かない人なので、どうだろう?と思ったが。

この田舎感、地元感は心地よい。
田舎を舞台にした時や、海辺舞台にした時、そのいい面というか、都市部在住者の「夢」みたいな面のみ描く本も多い。
例えば、社長は1年中魚くさい水産加工会社を背負っているし。
第三の猫は、数時間に1本の公営船でミサキとつながるシマ在住だし。
独創的な音を作り出す長い髪の女は、引きこもりだわ太めだわ。
それ以外にも、本当に個性的なミサキラヂオを取り巻く人々。

春は、それらの人々を紹介する感じで、ミサキラヂオを沿革を語り。
夏は、文字通りの「お祭り騒ぎ」に、何故か自分まで熱くなり。
秋は、1人の青年を巡って、それぞれに去来するものを持ち寄り。
冬は…その人々の、すべての総括が酒宴となって。

みんな、何かを抱えているのだと。
それを表現することは、ありなんだと。

あの、時間のずれる不思議なラジオは、そんなものを電波に乗せてる、そんな感じでした。


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「三匹のおっさん」有川浩 [読書]

今回は、おっさんが主人公・・・!?

三匹のおっさん

三匹のおっさん

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/03/13
  • メディア: 単行本


有川さんといえば、ベタベタに甘い恋愛モノって思っていたので、「何だ、このタイトル!?」と思ったら。

今回は、都市近郊の町の、幼馴染3人組のおじいさん・・・じゃなくて、おっさん3人組の活躍だった^^
昔は悪ガキだったという3人組・・・いや3匹は、定年で時間に余裕ができたりして、こっそり町の自警団みたいなものを始める。
そんな6話の短編なので、一気に読んでしまった。

腕っ節に自信がある2匹と、「1番危険な」技術を持つ1匹・・・
おっさんパワーはすごい!?

それと、老け込むのってスタイルからっていうのも、日ごろ思っていたから同感で。
そんなとこから祖父・孫交流が生まれるのも、他のおっさんがその格好を羨ましがるのも、微笑ましい。

で、メインじゃないけど有川さんらしい恋愛要素も入っていて、それはそれで有川さんの本を読んだ気になった。

[やや欠け月] [半月] [三日月] [満月]

最近、有川さん人気だけど、自衛隊のは実写では映像化するのが難しいだろうし。。。

だけど、この「おっさん」なら実写でもできそうだし、多分、狙われてるだろうなーなんて勝手に想像しながら読んでました^^
タグ:有川浩 読書
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「鷺と雪」北村薫 [読書]

お嬢様とベッキーさんのシリーズ第3作目です。

鷺と雪

鷺と雪

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/04
  • メディア: 単行本



何度も書いているかもしれないが、北村薫さんの「円紫さんシリーズ」が好きで。
日常の謎を、年上の方の導きで解くというあたりは、円紫さんシリーズに似ているが、こちらは昭和初期。

ますます転げ落ちていく時代の中・・・
差し挟まれる地名・風物などの小道具(?)は、その時代を見たことのないわたしには魅力的。
浅草十二階という言葉でワクワクする人だから、これは仕方ない。

そういう訳で、ツボにはまる物語ではある。

でも、毎回、読後に思う。
何でもお見通しのような別宮さんは、この「お嬢様・英子」をどのような眼で観ているのだろう。
今回、その印象が強くなったのは、学校の先生の言葉を別宮さんに話した英子さんを、別宮さんが諌めた場面があったから。

まだこのシリーズ、続きは出るのだろうか。
このまま時代が行けば、英子お嬢様とて、このままではいられないだろう。
ましてや、英子さんの周囲にはこの先の時代を生きにくい考え方の人たちが多いように思う。
お嬢様として育った英子さんが、この先の時代をどう乗り切るのか。
その時、別宮さんはどのような形で傍にいるのだろうか。。。

[やや欠け月] [半月] [三日月] [満月]

なにしろ、療養中の身でしたから、本を読む時間はいっぱいあった訳です^^
でも、できれば肩が凝らないようなものを読もう!と、入院中は児童書みたいなのばっかり読んでました。
で、普通の本復帰は、この本でした~。
タグ:読書 北村薫
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「ひゃくはち」早見和真 [読書]

これもスポ魂小説だと思っていいのだろうか。

ひゃくはち

ひゃくはち

  • 作者: 早見 和真
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/06/26
  • メディア: 単行本


高校球児だった雅人。
つきあった彼女が、実は高校時代に会ったことがある子だと聞かれて。。。
どこで会ったんだっけ!?と悩む現在と、ただがむしゃらに日々を生きてた高校球児時代を行ったり来たりで話は進む。

人の煩悩の数、108。
その数と、野球のボールの縫い目が同じなんて、本当???
で、世間で思う「健全の鑑」みたいな高校球児にだって、本当にいろんなことがある。

そう考えると、思い描く高校球児はありえない。
「そんな高校生、いないだろ、高野連」と、普通に思う。
合コンだってするし、合コン行けばお酒も飲むし、隠れてタバコをすったりする。
だけど、その姿を高校球児とイコールで結ぶのには、どうしても違和感を覚えてしまう。
高野連だけでなく、そう思ってしまうのが大多数で、それは多分、抗えない事実。

そんな、高校の野球部の、しかも最激戦区・神奈川のかなり有力な高校の、野球部員は寮生活をするような、そんな高校生達。
全員がベンチに入れるわけではない。
その努力や、夢をかけていた部分と、息を抜いていた部分と。

でも、きっと譲れない一線があって。
それは、それまで何より野球が好きで、甲子園というものに憧れて、それを目指すことを至上としてきていたとしても、それでも譲れないもので。

最近、「がんばって」という言葉を、どんな場面でも使わないようにしている。
でも、この本に出てくる父の手紙を読んで思った。
がんばって、と言った相手が帰ってくる場所を責任もって構えられる覚悟がある人は、「がんばって」という資格があるのではないか、と。

わたしも現役時代、高校野球の夢を見た一人なので。
キレイなことだけではないから、だけど、それでも追ってしまうのが甲子園だったから。
これでも、いいのだと。
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「金色の野辺に唄う」あさのあつこ [読書]

昔は浄簾と呼ばれる人が葬列の頭に立ち、葬送の送り唄を唄ったのだそうです。

金色の野辺に唄う

金色の野辺に唄う

  • 作者: あさの あつこ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2008/05/31
  • メディア: 単行本

柿が焔のように見える頃、1人の老婆が静かに息を引き取ろうとしている。
彼女・松恵の臨終は、とても穏やかそうに見える。

絵を描くことをやめてしまっていた曾孫の東真は、曾祖母の棺に入れるため柿の絵を描く。
松恵に珠を持っていると言われた孫の嫁の美代子。
どん底に落ちたときに松恵に食事をご馳走になった花屋の店員・史明。
父母のどちらにも似ない美貌を持って生まれた娘の奈緒子は、100本の竜胆で祭壇を飾る。

それぞれの耳元に、やわらかな言葉を残して。
それから、またそれぞれが新たな一歩を踏み出せるように。

人の心の奥なんてわからない。
自分の心が硬くなれば、余計に見えなくなる。
松恵自身の心も。

秋の風情と、静謐な死の情景と、白い菊の中に100本の竜胆、燃え上がるような柿の色。
「心優しいおばあちゃんが亡くなった」だけで終わっていない。
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「株式会社ネバーラ北関東支社」瀧羽麻子 [読書]

誰でも一度は夢見るんじゃないか、と思います。

株式会社ネバーラ北関東支社 (ダ・ヴィンチブックス)

株式会社ネバーラ北関東支社 (ダ・ヴィンチブックス)

  • 作者: 瀧羽 麻子
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2008/02
  • メディア: 単行本


何もかも捨てて、ここではないどこかでまったく新しい生活をすることを。
それは、少女時代にも夢見ることのような気がする。
この親の子ではない、とか。
この世界の人間じゃない、とか。
それと近いことだとわたしは常に思っていたんだけど、「ここじゃないどこかで、自分は自分らしく息ができるんじゃないか」みたいな感じのことは、誰でも一度くらい夢見たことがあるんじゃないかって。
今の仕事も人間関係もスッパリ切って、縁もゆかりもない土地で、一から始めてみたら。。。っていう。
夢は見るけど、大抵は本当に夢で終わる話。

それを実行してみて、いいほうに転がったらこんなかな、、、そう思った。

社名から推察できる通り、納豆の会社。
つらいことがあって東京にいることが苦痛になって、東京より北に向かった土地に再就職した女性の話。
というと、身も蓋もないのだけど。
全体に文章も軽いし、そこに敢えて突っ込んだり、嫌悪感を持つということもなく。
どん底に落ちながらも、計算しているところというか、計画性は、この夢見る話に現実性を添えている気もするし。
力をなくしている時は、こう「すべてが善人」みたいなのもありかな、と思うと、安心して読めた。


で。
そんなこと思いながら。
自分も思いっきり現実逃避して、今日は仕事を休んでしまいました。
わたしには「すべてを捨てる」勇気はないし。
でも、たまに目をそらしたくなる、こともあるんです。
(おいおい、先月もそんなこと言ってなかったかー^^;)
タグ: 読書
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「ゴールデンスランバー」伊坂幸太郎 [読書]

ハラハラしました。

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/11/29
  • メディア: ハードカバー


どうなっちゃうんだろう?
このまま青柳君は、犯人にされてしまう?
それとも逃げ切れる?
個人が敵に回すには、あまりにも大きなものを敵に回してしまった、ただの元・宅配ドライバー・青柳。
場面がくるくる展開し、学生時代の思い出に飛んだり、数時間前に飛んだり。
そして、ああ、そう繋がるの、という。

今回も仙台が舞台。
それにしても、今回は仙台の人たちが「粋」っていう感じがすごくした。
本来なら江戸っ子に「粋」って使うんだろうけど、東京から来ているのは大きな「陰謀」、それに対し仙台の人たちはたくましいと言うか面白いというか。
「だと思った」とか「ロックだねえ」とか「詰め」とか、列挙できないくらい些細なことが、いい味出していたような、そんな気がする。
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「ブックストア・ウォーズ」碧野圭 [読書]

売り上げを伸ばさなければ、閉店になってしまう。。。

ブックストア・ウォーズ

ブックストア・ウォーズ

  • 作者: 碧野 圭
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 単行本


 

今、名だたる文学賞なんかより、本屋大賞にノミネートされる本のほうが、興味わくもんなあ、と思って手にした。

40歳の副店長と、コネ入社のお嬢様。
前半は、この二人の私情を挟んだ仕事振りに、ちょっと辟易・・・確かに、書店員は閉鎖空間なのかな、という気はするけど。
書店と出版社と、「そんなふうにつながっているんだ」と業界の内側を覗いた気分になれる場面も多々あり、なるほど興味深い。

副店長が店長に昇格する辺りから、敵対していたこの二人が協力体制をとるようになり、閉店を阻止するべく様々な工夫を実践していく。
初めは無理だと思われた数字もクリアして、「よし、やった!」と、思うのだが。。。

全体に、軽い感じで読めてしまう。
大団円的なラストも、そういう感じだし。


もしかして、これ舞台は吉祥寺あたり???
なんて思いながら、また本筋とは違うところに注目して読んでました。
というのも吉祥寺には、この「ブックストア・ウォーズ」に出てくるような地域型大型チェーン書店っていうのがなかったから。
駅ビル内の書店は昔からあるチェーン系だけど、大型という店舗ではないし、あとはパルコブックセンターに一番よく通ったけれど、地域型って雰囲気ではなかったし、ルー・エはわたしが子供の頃は喫茶店だったし。。。
わたしが新入社員で働いたのは文具メーカーで、首都圏有力小売店をあちこち回ったんですが、その際、「地域型大型チェーン書店」に出会い衝撃を受けました。
そもそも、吉祥寺には文具を売っている書店がなかったので、なんで取引先が書店なんだ!ってまず疑問でした^^;
で、あちこちの店員さん(ま、文具担当者ですが、基本的には書店に勤める人たち)と接するうち、この方たちの品揃えに対する地域性やレイアウトや、様々なものに対するこだわりに感銘を受けたんです。
(いや、若かったです、はい)
わたしが接したのは文具担当者でしたが、彼らが異動になって書籍を担当したら、またそれぞれの目線で面白い仕事をしたんだろうなぁ、と思いました。
わたしの成長期に、そういう書店と触れ合えていたら、なんだかちょっと面白かったかな、なんて思ったり。

そんな、本筋と関係ない部分にしみじみしちゃいました^^


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「神田紅梅亭寄席物帳 道具屋殺人事件」愛川晶 [読書]

奥の深い世界を、のぞいた気がします。
道具屋殺人事件──神田紅梅亭寄席物帳  [ミステリー・リーグ] (ミステリー・リーグ)

道具屋殺人事件──神田紅梅亭寄席物帳 [ミステリー・リーグ] (ミステリー・リーグ)

  • 作者: 愛川 晶
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2007/08/23
  • メディア: 単行本
落語家が謎を解く…というと、思い浮かべるのはまず北村薫さんの「円紫さんシリーズ」なんですが、それとはちょっと趣が違う。
こちらは噺家が身内…噺家の奥さんの目から落語界をみているからだろうか。
落語の世界の独特の上下関係や、繋がりを興味深く読んだ。
 
ひとつの噺に込められた噺家の想い。
二つ目の噺家・寿笑亭福の助に降りかかる噺家としての試練、それを見守る引退した師匠やおかみさん、お席亭や、それぞれに道を進む先輩・後輩の噺家たち。
 
そんな落語家の内側を描きながら、ストーリーのほうは高座に突然あらわれた血染めのナイフの謎を追いながら進む。
そんなミステリーと落語のお話が織り交ぜられた、3篇でした。
 
久々に、生で落語を聴きに行きたいなあ、なんて気になります^^

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「モデラートで行こう」風野潮 [読書]

吹奏楽部です。
モデラートで行こう (ピュアフル文庫 か 1-2)

モデラートで行こう (ピュアフル文庫 か 1-2)

  • 作者: 風野 潮
  • 出版社/メーカー: ジャイブ
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 文庫
なんたって、手に取った感じがすでにライトノベル。
それもそのはず、ピュアフル文庫って、対象としているのは主に中高生だそうで。
救いは児童文学とライトノベルと一般文芸の中間的ポジションの作品が多いという点か・・・
なんでこの本を読もうと思ったかというと、設定が自分の高校時代にかぶっていたので。
(それだけ)
男子校が男女共学になったばっかりの高校の吹奏楽部に入部した女の子の話。
残念なのは、女の子が誰もホルンにならなかったこと・・・と、本当に吹奏楽からむと独りよがりな感想をもってしまう。
気恥ずかしくなるくらいかわいらしい話の展開に、もう、この歳になるとついていくのが大変というか、何というか・・・
惜しまれるのは、吹奏楽部のもつ「不健康な健全さ」は特に描かれることなく、ただたださわやかだったことか・・・(いやいや、ライトノベルなんだからそれで正解なんだろう)
初心者で楽器始めて、ステージに立つこと、ほんの1,2歳年上なだけの先輩の演奏が神業のようにかっこよく見えたり、楽器が愛しくなること・・・そういう気持ちを自分ももっていたよなあ、なんて思い出したりして。

と、いうのも、わたし自身、男子校だった高校にできた女子部の2期生として入学し、楽器初心者なのに吹奏楽部に入っちゃった人なんです^^
私たちはあまり感じませんでしたが、1期生の女子の先輩達は男子校の壁にいろんなことを阻まれ、男子の先輩と、顧問の先生と、学校と戦ってきていました。
そんなことや色々思い出しながら読んでました。
「ブラバン!」とはまったく違いますが、吹奏楽部が描かれている本があると、つい試したくなるのは、仕方ないんですかねえ。

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