「木漏れ日に泳ぐ魚」恩田陸 [読書]
- 作者: 恩田 陸
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
一緒に暮した部屋で迎える最後の夜。
引越し前夜に向かい合う男女。
最後に、避けては通れない、1年前の山への旅行について、そこで起こったことについて、語らなければならないとお互いに思って。
二人が会話していくうちに、解けるように蘇る記憶と、真実。
朝がくるまで。
なんて長くて重い一晩だったんだろう。
私たちは随分遠いところまで来てしまった・・・
本当に。
関係ないのですが、この山、行きたいと思っていたんだよなあ、なんて思いながら読みました。
数年前に屋久島の縄文杉まで登ったときは、次はここだっ!くらい思っていたんですけど^^;
トレッキングシューズはシューズケースの奥に埋もれています。。。
「晩夏のプレイボール」あさのあつこ [読書]
高校野球をとりまく、いろんな人のお話です。
わたしは高校を選ぶポイントの一つが、「甲子園に行けそうな気がする」だった。
さらに、部活を選ぶ時は、「絶対に甲子園に連れて行ってもらえる」ということで吹奏楽部を選んだ。
実際には、高校3年間1度も甲子園に行くことはなかったけれど、でも、かなり熱い思い出となって残っている。
高校野球ってすごい。
負けたものには振り返りもしない、甲子園。
1度負けたら、もう、すべてが終わり。
そう思わせる、甲子園。
強豪校も、出ると負けチームも。
目指すのは、あの遠い球場。
でも…「負けたらすべてが終わり」ではなかったよな、確かに、と思い出した。
(作中、全国優勝校のエースの話もあったけど…その子も)
そういえば、10月に「ブラバン!甲子園」というコンサートがあるらしいです。
吹奏楽で、高校野球の応援歌だけを演るという、マニアックなコンサートです。
すごい行きたいと思っています…でも、興奮しすぎて泣いちゃうかもです。
「クレィドゥ・ザ・スカイ」森博嗣 [読書]
「学校のセンセイ」飛鳥井千砂 [読書]
センセイだって、いろいろある。
とくにやりたいことがなく、気がつけば先生になっていた。
生徒は可愛げがないし、同僚とのつきあいも面倒だ・・・
そんな桐原が、地元・埼玉を離れて、塾講師から名古屋の中堅の私立高校の教師になった。
先生は、生徒を好き嫌いで見ちゃいけない。
先生は、生徒に対し大人の対応をとらなくちゃいけない。
先生は、生徒に対して使う言葉を選ばなくちゃいけない。
先生は、生徒の前で煙草を吸うのもよろしくない。
・・・などなど。
課せられた枠は多い商売だと、再認識した。
そんな枠もうまく装っている、それが桐原だ。
だってそれが課せられた枠なら、それをうまく潜っていく方が確実に楽だから。
そんな教員生活が2年目を向かえるころ、バッチリ60年代のファッションで決めて、周囲から浮いた格好をした小枝と出会う。
高校生はいいな。
飽きたから、考え方が変わったから・・・そんな感じで、自分を切り替えることができる。
社会人も何年目かになってくると、そこまで作った自分を変えるのは難しい。
自分でも意識していないうちにいろんなことを上目線で眺めていた桐原も、この面倒くさいことだらけの日常で、どんな方向に行くのか。
人とちゃんと向き合うことはキツイけれど。
ヨソモノである桐原を際立たせるのに、「名古屋」というのはいい味出てるなぁと思った。
程よく都市だけど地方感がある、というか。
食に代表される独特の文化だとか。
名駅のナナちゃんって何だろう・・・シロノワールって・・・???
(この「名駅」っていう言い方に、もう名古屋を感じてしまう。。。^^)
わたしのキーワードも『面倒くさい』か『面倒くさくない』か、です。
仕事をする上でも、面倒なことを回避するための根回し・努力・愛想は惜しまない人です。
そのほうが楽で、スムーズに話が進むし。
でも、ちょっと考えてしまいました。
うん。
本質に向き合ってはいないんですよね、きっと。
「ビザール・ラブ・トライアングル」浅倉卓弥 [読書]
そして、受け継がれていくもの、が。
共通するのは、親と子の間にある想い。
形は違っても、離れていてもそこにはある。
そして自分にも次の世代にも、それは続いてく。
浅倉さんには不思議な事象を描く、というイメージがある。
(最初に読んだのが、「四日間の奇蹟」や「君の名残を」だったからか。。。)
今回の短編の中にはもちろんそういうお話もあったけど、それが特に劇的というか大きく扱われることはなかった。
どちらかというと淡々と、明日に続いていく日常があって、それでいて自分にも流れているものを感じる、そんな雰囲気だったと思う。
「一瞬の風になれ」佐藤多佳子 [読書]
それを打ち破ったのが、森絵都さんの「DIVE!」。
スポーツのもつ「間合い」みたいなもの、文章で表現なんて、しかも飛び込みなんていう瞬間の競技を描くなんて無理なんじゃない?と思っていたから。
それが、違っていたと思い知らされた。
最初は「いまどき」風に喋り口調で進む文体に、ちょっと抵抗を感じましたが、まあ慣れてしまえばテンポよく。
三部構成になっていて、それぞれが高校1年、2年、3年にあたる。
同じく天才的スプリンターだが、根性と執着がまるでなく、陸上をやめてしまった連。
二人は「かけっこ」をするために高校で陸上部に入部する。
華やかな試合以外の時間、スポーツ選手ってこんなにストイックなんだな、と。
そして、試合のシーンは本当に白熱してしまう!
陸上競技のチームワークって何?と思ってしまっていたものが、ここでもガラっと崩れる。
ただ、走るだけなのに。
ただただ、走ってバトン渡すだけなのに。
1人で手に汗握ってしまった^^;
誰かの死が悲しいのは当たり前で、それに泣くために本を読むわけじゃないし。
最後の最後まで、新二の成長を、連の成長を。
なるほど~
「フラッタ・リンツ・ライフ」森博嗣 [読書]
フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life
- 作者: 森 博嗣
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/06
- メディア: 単行本
これは、時間的には「スカイ・クロラ」の前にあたるんでしょうか?
今回はクサナギスイトではなく、クリタジンロウの目から語られる。
もう永遠の子供ではなくなってしまったというクサナギの秘密を守るために、様々な大人の思惑が交錯する。
彼らはただ飛びたいだけなのに。
その先にあるのが死だとしても、ただ飛びたいだけなのに。
どうやら、あと1作で「スカイ・クロッラ」のシリーズは完結なんだとか。
「獣の奏者」上橋菜穂子 [読書]
決して人に慣れない獣と共に生きる道を探した少女・エリン。
その獣を人に慣らさないために、何代にもわたって真王に受け継がれてきた禁忌の意味が途切れてしまった。
「ひとがた流し」北村薫 [読書]
泣きました。
北村薫さんのお話は好きです。
というか、円紫さんシリーズが好きです。
日常に潜む謎解きのお話が多い中で、この「ひとがた流し」は少し感じが違いました。
学生時代からの40代の女友達3人・・・アナウンサーのトムさんこと千波、物書きをしている牧子、元編集者で今は写真家の妻・美々。
千波は華やかな仕事をしているのに、40代になっても浮いた話ひとつなく、独身。
牧子と美々は、バツ1でそれぞれ一人娘がいる。
年を重ねてきただけいろいろあった3人は、今は埼玉のある町で結構近場に暮らす身となっている。
千波には夢がある。
20代の頃、担当していた朝のニュース番組。
その時は下手に座る、アシスタントのアナウンサーだった。
千波の局では、大きなニュース番組の上手に座るメインアナウンサーは今まで男性ばかりだった。
千波は自分の声でニュースを伝えたい、脇に控えている存在ではなく、、自分が伝える仕事をしたいと思い、そのために努力を重ねてきていた。
そして、ついにその夢が叶う矢先、千波は余命短い病気に侵されていると宣告される。
牧子と、娘のさき、美々と娘の玲、夫の類。
そして、局の後輩で10歳以上年下の、良秋。
千波を取り巻く人々が、それぞれの想いから、千波の生活を見守る。
最近、「泣ける本」っていうのが流行っていて、この前も何かの「泣ける本ベスト1」みたいにうたわれていた本を読んでがっかりしたばかりだった。
だって、そういう本、泣けるの当たり前じゃない。
人の死を扱ってるのがほとんどなんだもん。
人が死ぬのが悲しいのは当たり前じゃない。
「ひとがた流し」も、最後には死が待っている話だ。
だけど、「なんだ、最近よくある、ありきたりの泣ける本か」とは思わなかった。
なんだろう。
千波という女性が。
牧子が「いつも気を張っていた」という千波が。
美々が「頑丈な鍵をかけている」という千波が。
上司が「頑張りすぎるほど頑張り屋だ」という千波が。
「やり直せないことが好き」という千波が。
そんな千波の周りにいる人たちの暖かさと、距離感が、淡々と描かれていた気がする。
きらきら水面を輝かせながら流れていく川のイメージが、とても残りました。
「ブラバン」津原泰水 [読書]
このタイトルについ手が伸びてしまうのは仕方ない…!?
それは、わたしも高校生時代、吹奏楽部に所属していたから。(しかも、どっぷり)
1980年、高校に入学した主人公が思わぬことから吹奏楽部に入り、弦バスを弾くことになる。
彼は25年後、あまり流行っていない飲み屋をやっている。
本当に、自分ひとりが何とか食べていければいいか、という程度の。
そこに、1学年上の先輩の、結婚式でブラスバンド再結成の話が舞い込んだところから、話が進んでいく。
比較的時間に融通のきく彼は、かつての部員を消息を尋ねてまわることになる。
そこには、それぞれ幸せな生活を送るものや、思いがけない運命に流されているものも、それからもちろん連絡のつかないものもいて。
それらが、高校時代のエピソードというか、部活生活と織り交ぜて語られていく。
合間合間に音楽、楽器に関する彼の薀蓄が入る。
それが、彼の音楽オタクぶりを思わせて面白いし…それに、今でも音楽を愛しているのだとわかる部分でもあると思う。
まったく話の流れとは関係ないことだけれど、わたしは自分がかつてやっていた楽器について語られている箇所では涙が出そうになった。
あれは何なんだろう?
そうだよ、そうなんだよ!って。
この楽器、すごい楽器なんだよ、って。
裏打ち・裏メロ・ロングトーンが多くて、吹奏楽ではあまり目立たないけどさ、でも、なくてはならない存在なんだよね!って。
勝手に盛り上がってしまう。
あの、自分の楽器かわいさって、どこから沸いてくるんだろう。
曲目はわたし達の頃と若干年代が違うからか、うちのコーチの趣味なのか、あまり重なっていなかった。
わたし達の吹奏楽部はアルフレッド・リードの曲が多かったように思う。
「アルメニアン・ダンス(パート1)」、「ミュージック・メーカーズ」、そして「エル・カミーノ・レアル」などなど。。。
あと、みんなが盛り上がって好んで演奏したのはT.スクエアの曲。
「OMENS OF LOVE」、「TRUTH」、「宝島」。。。
う~、懐かしいっ!
なんて、自分の思い出まで引っ張り出しながら読み進める。
バンド再結成なんて、実際にはそんなに容易くなく、楽器から離れてしまっているものや、楽器・譜面の調達、練習場所の確保等々…そもそもいい年をした社会人を何度も集めるのは難しい。
そういった壁も描かれていて、再結成の夢物語と現実を見ることができる。
でも、再結成を夢と思わせる、そんな力がバンドにはあるんだろうな、と改めて思った。
前に読んだ、何かの小説の主人公の女の子が、吹奏楽部を「健全ないやらしさ」と評したことがあったけれど、それは本当に吹奏楽部をよく表している言葉だと思う。
その感じが、このブラバンにもよく出ていて。
バンドって、音を合わせるって、駆け引きするみたいな、それでいて調和して、気持ちは込めるけど冷静に見なきゃいけなくて。
あの密接感?連帯感?
それで、妙に濃い世界ができあがる。
ああ、懐かしかった。
わたしまで楽しいという一言では片付かない、バンドの夢が見られました。
この本の中に、「吹き真似はすごい上手い、まったく楽器が吹けない先輩」が登場し、主人公は先輩が吹き真似であったことを25年後になるまで知らずにいて驚いていましたが…
わたしは就職して4年目くらいに、吹奏楽部で集まった時に「実は譜面が読めなかった」と告白したら、みんなに「俺達は騙されてたのか!!」と嘆かれたことがあります^^;
はい。本当に譜面が読めなかったので、初見の時は吹き真似してました♪