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「ひとがた流し」北村薫 [読書]

泣きました。

ひとがた流し

ひとがた流し

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 単行本

北村薫さんのお話は好きです。
というか、円紫さんシリーズが好きです。
日常に潜む謎解きのお話が多い中で、この「ひとがた流し」は少し感じが違いました。

学生時代からの40代の女友達3人・・・アナウンサーのトムさんこと千波、物書きをしている牧子、元編集者で今は写真家の妻・美々。
千波は華やかな仕事をしているのに、40代になっても浮いた話ひとつなく、独身。
牧子と美々は、バツ1でそれぞれ一人娘がいる。
年を重ねてきただけいろいろあった3人は、今は埼玉のある町で結構近場に暮らす身となっている。

千波には夢がある。
20代の頃、担当していた朝のニュース番組。
その時は下手に座る、アシスタントのアナウンサーだった。
千波の局では、大きなニュース番組の上手に座るメインアナウンサーは今まで男性ばかりだった。
千波は自分の声でニュースを伝えたい、脇に控えている存在ではなく、、自分が伝える仕事をしたいと思い、そのために努力を重ねてきていた。

そして、ついにその夢が叶う矢先、千波は余命短い病気に侵されていると宣告される。

牧子と、娘のさき、美々と娘の玲、夫の類。
そして、局の後輩で10歳以上年下の、良秋。
千波を取り巻く人々が、それぞれの想いから、千波の生活を見守る。

最近、「泣ける本」っていうのが流行っていて、この前も何かの「泣ける本ベスト1」みたいにうたわれていた本を読んでがっかりしたばかりだった。
だって、そういう本、泣けるの当たり前じゃない。
人の死を扱ってるのがほとんどなんだもん。
人が死ぬのが悲しいのは当たり前じゃない。

「ひとがた流し」も、最後には死が待っている話だ。
だけど、「なんだ、最近よくある、ありきたりの泣ける本か」とは思わなかった。
なんだろう。
千波という女性が。
牧子が「いつも気を張っていた」という千波が。
美々が「頑丈な鍵をかけている」という千波が。
上司が「頑張りすぎるほど頑張り屋だ」という千波が。
「やり直せないことが好き」という千波が。
そんな千波の周りにいる人たちの暖かさと、距離感が、淡々と描かれていた気がする。

きらきら水面を輝かせながら流れていく川のイメージが、とても残りました。


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